散る桜の美学
みなさま、いかがお過ごしでしょうか?
こちらは私のもう一つの拠点としている中目黒の桜です。今まで満開の桜を見ても正直心ときめくことはなく、むしろ大抵曇り空なのでもの悲しさをおぼえておりました。しかしながら、先日用事がございまして早朝の目黒川を通りかかりましたら、ひらひらと風を楽しむ様に惜しみなく花を散らせている桜の姿に心を奪われました。橋の真ん中から眺めると、私の視界を覆いつくすように美しく舞う桜はやがて川面に浮かび、今度はゆっくりと流れに身を任せてゆらゆらと川下へ運ばれていく美しさに我が身を投影したのは私だけではないでしょう。朝の日差しに照らされて目の前に広がる風景全体がロゼシャンパンのような色合いを帯び、私はしばらくその中に溶け込み、気づいたら大好きな坂本龍一さんのピアノが頭に流れていました。イヤホンをつけてなくても人はイメージをすれば簡単に好きな時に音楽をかけることができるのですね。その数日後、彼の訃報を速報で知りました。年末のピアノライブの映像で最後の力をふりしぼり、一音一音の響きを愛でるように奏でられたお姿が忘れられません。芸術は長く、人生は短し。私の中に彼の作品は永遠に残ります。桜と共に。ご冥福を心よりお祈りします。
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